受賞者インタビュー
2018-2019
03
Jason Parnell-Brookes
イギリス
一般部門 単写真 金賞
ー ニコンフォトコンテストに応募したきっかけは何ですか?応募に至るまでのストーリーや苦労を教えてください。
長年ニコンを使い続けてきたので、ニコンが開催する ニコンフォトコンテスト はもともと知っていました。ニコンフォトコンテスト 2018-2019 一般部門 単写真のテーマが "Change“ に決定したことを知ったとき、10年ほど前に初めてのデジタル一眼レフカメラ―Nikon D90―で撮影したある写真を思い出しました。はたしてあの写真がテーマに適しているだろうか、応募して良いものだろうか。自信が持てずに迷っていました。そのとき、背中を押してくれたのは私のパートナーでした。あのときの彼女の後押しがなかったら、金賞を受賞することもなかったでしょう。そう考えると、彼女に対する感謝の気持ちでいっぱいになります。
ー 受賞作品を撮った時のエピソードを教えてください。
受賞作品は、Nikon D90 を用いてマニュアルモードで撮影したと記憶しています。(D90は当時、一眼レフカメラでHD動画撮影機能を搭載した初めての機種でした)
美しく柔らかい光が窓から差し込んでいたので、私は窓の脇から撮影しました。祖父母には何も話しかけたり、指示をしたりはしませんでした。そのため、本当にありのままの姿を捉えることができました。2010年もあと2日でクリスマスという日で、背後の壁にかかっている写真のフレームには装飾がなされています。祖父は病気のために周りで起きていることを理解することすらできず、部屋の奥にあるソファーの上で毛布にくるまっています。ちょうど昼食がテーブルに運ばれてきたタイミングでした。この写真は、決して日の目を見るために撮影されたものではありません。子孫に見せようと、記録のために撮影した一枚です。シャッターを切ったときは、家族以外の人がこの写真を目にするなど思いもしませんでした。ましてや、世界中の人の目に触れ、各国の展示会で披露されることになろうとは。目を凝らしてこの写真を見ると、祖父母の愛犬 Bella が食べ物を求めて祖母の腕の向こうに写っていますが、このこともコンテストに応募して初めて気づいたくらいです。
ー 受賞後、ご自身のキャリアなどに変化はありましたか。
表彰式に参加するために日本に行き、そこで多くの素晴らしい人との出会いがありました。他の受賞者もニコンの社員も、皆が信じられないほど友好的で親切でした。共に受賞した人たちとは、今でも連絡を取り合っています。ただ、私の場合は受賞前後で大きく変化したことは特にありません。
ー 最近の活動について教えてください。
以前から常に身近に感じてはいたのですが、最近になって―特にパンデミックによるロックダウン後―自然や風景写真に力を入れるようになりました。二週間にわたるネオワイズ彗星撮影にはやりがいを感じましたが、日中は寝たり起きたりを繰り返し、夜通し撮影を続けるという毎日でしたので疲労困憊しました。また、地元を探索し、近場で野生動物をじっくり撮影する時間にもなりました。直近では、”Explorers Against Extinction” 主催のコンテストにおいてファイナリストに選ばれました。受賞できたかどうかは、現在結果発表を待っているところです。また、"Fstoppers" に掲載される写真の撮影も行っています。
ー 今後NPCに参加したいと思っているフォロワーの方々へメッセージをお願いできますでしょうか。
コンテストにおける選考はとても主観的要素が強いです。年々変化する社会による影響を受けますし、審査員の個人的な意見により左右されます。そのため、真に素晴らしい作品でも落選することがあります。ただ、だからと言って参加を思いとどまるべきではありません。応募者と審査員の両方の立場を経験した人間として、私は皆さんに過去の受賞作品を研究することをお勧めします。全体のトーンと被写体をよく観察し、ベストと思う自分の作品の中からコンテストのテーマに最も関連のあるものを選びます。また、テーマの一字一句に囚われすぎないということも大事です。テーマと関連づけることができ、適合する作品であれば良いのです。さらに、他の人の意見を取り入れると良いでしょう。現に、私がこのコンテストで受賞することができたのはパートナーによる後押しのおかげなのです。
ー あなたにとって「写真を撮る/動画を撮る」とはどういう意味を持っていますか。
4歳の私が初めて母と祖母、叔父を撮影して以来、写真は私の生活の一部になりました。初めて撮ったその写真は、不思議なくらい今回受賞した作品に似ています。
私の場合、父も母も写真の道に進むことを応援してくれました。私にとって、写真は世界の発見です。極めて微細なマクロの世界もあれば、風景や夜景などの広大な世界もあります。世界各国を訪れ、多くの素晴らしい人たちに出会えたこの期間中、私の背中には常にニコン機材一式がありました。