NIKON

受賞者インタビュー

2018-2019

02

Sara De Antonio Feu

スペイン
グランプリ
Next Generation 部門 単写真 金賞

ー ニコンフォトコンテストに応募したきっかけは何ですか?応募に至るまでのストーリーや苦労を教えてください。

何年もの間、私は常にフォトコンテストから刺激を受けてきました。コンテストへの応募は過去の作品を見返し、再発見するとても良い訓練になると私は思います。この訓練がテーマにマッチする作品を選ぶことに役立ちます。ニコンフォトコンテストは、その長い歴史の中で多くの優秀な作品を選出してきた国際的なコンテストですので、私はかなり早い段階から魅力を感じていました。応募はオンラインで簡単にできますし、映像やアートといった分野の専門家で構成された審査員によって受賞作品が決定されます。

ー 受賞作品を撮った時のエピソードを教えてください。

この写真を撮影した頃、私はある地区の地域病院でボランティア活動をしており、午後はNGOが地域で推進しているプロジェクトに参加していました。ある日の午後、Ayimpoka とその家族のもとを訪れたのは、美しく日が暮れて行く時間でした。マラリアが治ったばかりの Ayimpoka はあまり元気がなかったので、私たちは何もせず、ただ彼女に寄り添っていました。そのとき、絶好の光加減の中から大きな器を頭上に乗せた女性が現れました。撮影のお願いをしようと私が彼女に向って駆け出すと、周りにいた子供たちも一緒に走ってついて来ました。数分後、互いに抱き合っている姉妹がふと目に留まり、その瞬間を捉えたのがこの一枚です。

ー 受賞後、ご自身のキャリアなどに変化はありましたか。

家族や友人がとても喜んでくれました。ただ、私にとって真の変化はより内面的なところにあります。受賞により、私は自信を持つことができました。そして、自分が撮った写真には人に感動を与える力があり、表現したストーリーには人に影響を与える力があることを知りました。受賞後は、憧れの国際的な通信社とともに大きな影響力がある報道系のワークショップに参加する機会に恵まれました。この経験を通じて、この分野に対する情熱はますます強いものになりました。そして、写真(特に技術面)について正式なトレーニングが必要と考えるに至り、今年3月から受講しているプロフェッショナルコースに申し込みました。

ー 最近の活動について教えてください。

ここ最近では、街中や職場におけるパンデミックの様子を記録するプロジェクトを開始しました。多くをお話しすることはできないのですが、たとえば保護器具を身につけた同僚の姿や、パンデミックに対するさまざまな意見やコロナ禍で最も辛かった経験について話しをする様子を写真に収めてきました。ただ、このプロジェクトは目下、休止状態にあります。あまりにも辛すぎて、活動できなくなって2か月が経とうとしています。あと少しでこの心的外傷後ストレスから回復し、プロジェクトを再開できることを願っています。
今年は実行に移したいと考えていた企画がたくさんありました。主要プロジェクトでは、ケニアのあるコミュニティーにおける活動を予定していたのですが、渡航一週間前に新型コロナ対策でロックダウンとなり、すべてのフライトがキャンセルになってしまいました。将来、このプロジェクトを再開することができる日を心から待ち望んでいます。

ー 今後NPCに参加したいと思っているフォロワーの方々へメッセージをお願いできますでしょうか。

まずは、すべての人に参加して欲しいと思います。そして、与えられたテーマに集中すること、そのテーマを個性的に表現できる強力なストーリーを見つけることです。つまり、私から皆さんへのアドバイスは「強力な(インパクトのある)ストーリーを美しい構図として表現すること。そして、その作品を信じること。」です。もしストーリーを伝えることが重要と考えるならば、ストーリーを伝達するための手段である写真を信じること。誰にも左右される必要はありません。自分が決めたこと、自分の目を信じるのみです。

ー あなたにとって「写真を撮る/動画を撮る」とはどういう意味を持っていますか。

撮影しているとき、私には時間という概念はありません。夢中になってしまい、何時間でも撮っていることができます。私のような記憶力が良くない人間にとって、写真は記憶です。写真があれば忘れ去ることはありません。写真の中には、人生の中の大切な瞬間があります。今はもういないけれど、また会いたい人がいます。写真があることで、より理解しやすくなるストーリーがあります。私たちにとって、これらを残してくれる唯一の手段が写真である場合もあります。自分の手でそのような写真を撮ることができるとしたら、それは素晴らしいことだと思うのです。たしかに、写真を撮るだけなら誰にでもできる時代です。ただ、ここで重要なのは自分自身の目を通してその瞬間を捉え、自分自身の視点で表現する力なのです。